水のなかの色

あいまいなものについて、考えごと。

少なくなった考えごと

考えごとはしていますか。

過去の私はしているでしょうね。昔からずっと考えごとをしていました。空想の世界のことや私にまつわる謎のこと、たくさん考えては自分だけのノートに書いていました。学校で使うどの科目のノートよりも、そのノートが埋まるほうがそういえばいつも早かったな。

そんな過去の私は驚くかもしれませんが、最近の私は一日じゅうずっとは考えごとをしていないのです。考えごとが止まらなくて眠れなくなることもへりました。数か月前に会社員になってからというもの、帰ってきて洗濯と掃除と料理とお皿洗いをして、シャワーを浴びて髪を乾かして、そのうちに眠たくなって寝るという生活で、私は仕事や家事のようなやらなきゃいけないことをやっているあいだはほかのことを考えられなくなるものだから、朝でかけて以降は本格的な考えごとをしないという日もあるくらいです(これまでは記憶にあるなかでは、よほど忙しくないかぎり毎日考えごとをしていた気がするのですが)。本格的な考えごとをするのは時間のある朝か休日の電車のなかぐらいかもしれません。

それでも自分だけのノートの残りページは徐々にへっていくのですが、欲しいもののことを書くのに金額や購入時期をくわしく書いたりだとか、現実的なメモをかなり多く含んでいるので厳密な意味での考えごと(私の考えごとの定義はもっと空想的でふわふわしたものみたいです)はやっぱり少なくなった気がします。

まあ考えごとは止まったわけではないのです。ただ、考えごとの量がすごくへってしまって、すごく限定的でささやかなものになってしまったと感じます。これまでは頭のなかでいつもだいたい3つくらいの考えごとが同時に流れていて、そのどれもが気になって大変だったんです。私の思考はゆっくりなのに頭のなかでたくさん言葉が流れるからそれを追うのに必死でした。それが朝と電車のなか限定になって、ほかの時間はかわりに「つぎは〇〇をしなきゃ」とか考えているんですが、そうすると〇〇が終わったときに何も考えていない(頭のなかに言葉が浮かばない)瞬間ができて、そういうときにすごく外の世界がくっきりと感じられます。私は考えごとがいちばんすきだから、考えごとばかりしていられないのはすごくさびしいのですが、世界がくっきりするその感覚はけっこう好きです。

最近はよく考えごとのかわりに頭のなかで、どこかできいたことのある音楽がずっと流れています。カフェのバックミュージックみたいで落ち着きます。同じ曲が何度も何度もかかったり、バラードのあとにいきなりポップなCMソングがかかったりするので落ち着かないこともありますが。このごろは朝早く起きて、昨日頭のなかでかかっていた曲やはじめてきく曲をかけて、スマートフォンの楽器のアプリでメロディーをなぞって遊んでいます。高校生のときも大学生のときもギターを買ってあまりひけるようにならなかったけれど、考えごとを追いかける必要のない今ならなんだかひけそうな気がします。というか、ひけるようになるまで長い時間がかかったとしても飽きずにやれる気がします。いつまでこういう時期が続くかはわからないけど、とりあえずかわいい色のエレキギターでも買ってみようかな。