水のなかの色

あいまいなものについて、考えごと。

過去の私と未来の私へ

お元気ですか。私はけっこう元気です。

大学生ではなくなって、会社に通いはじめて数か月がたちました。新しいまちは大きな川と橋がある私好みの土地です。山に囲まれていて、これまでのようにすぐに海まで出ることはできませんが、近くのスーパーに行けば好きな野菜や果物を買うことができます。大学生のころは学食に頼りきりでめったに自炊もしなかった私が料理をするようになりました。やっぱり器用ではないから見栄えのするものは作れませんが、自分ひとりがおいしいと思えるものなら作れるものですね。

会社ではパソコンで文字や数字を打ったり車を運転して書類を出しに行ったりしています。会社にはねこがいてあじさいが咲いています。みんなやさしいです。おしゃべりできる同期もできました。そんなわけで1日8時間なんとか会社にいることができています。土曜日になれば大学時代からの友だちに会いに行くこともできますし。今のところはなんとかやっていけそうですよ。

だけど、今も気分は大学生なんです。というか高校生かもしれないし中学生かもしれない。放課後はずっと友だちとしゃべっていて、自分が将来何になるかばかり考えていた学生時代の気分なんです。基本的に私は自分のことを14歳か15歳くらいでイメージしていて、そんな中学生くらいの子どもが会社に行ったり車を運転しているような妙な気分なんです。自分が「会社」とか「仕事」とか「学生時代」とか言っていることに違和感があって、私はそんな感じじゃない、と思います。なんというか、私は私のやり方を忘れてしまった。もともと「私のやり方」なんてないのですが、大事なことを忘れてしまったみたいなちょっとヒンヤリする感覚です。

そこで朝早くに起きて、今まで好きだったことをちょっとずつまたやってみることにしました。文章を書くのは好きなことのひとつです。過去の私が書いた文章は、やっぱり恥ずかしいんですが、それでも私は好きなのです。友だちに嫌われたときも勉強ができなかったときもずっと眠たかったときも、何も考えられない気分だとそのころの私は思っていたのですが、そのとき書いた文章を読めばちゃんと感じて考えていたっていうことがわかります。今の私だってきっとそうでしょう。だから、未来の私にむけて書くというのがひとつ。

もうひとつ、過去の私にむけても書きたいと思いました。いつ考えても不思議な気分になることですが、中学生の私も高校生の私も大学生の私ですら、今の私のことや住んでいるまちのことを知りません。過去の私はずっと、将来の心配ばかりしていましたから、今の私がなんとかやっていることだけでも伝えてあげたいです。もちろん過去の私は今の私の文章を読むことはできませんが、今の私のなかには各時点の私がいると思うので、その私たちに読んでもらうのです。

というわけで、ここには過去と未来の自分に宛てた手紙をおくようにしようと思います。今すぐたくさん書きはじめるわけではないかもしれませんが、こういう場所を作っておくだけでちょっと自分が確かになるような気がします。子どもでも学生でもなくなった私がちゃんと生きていて、なんとかやっていることを書くことにしましょう。過去の私と未来の私と、ついでにどこかにいる私に似ただれかのために。