水のなかの色

あいまいなものについて、考えごと。

手に触れないのが好きで、怖い

不思議なものが好きです。目に見えない、手に触れない、曖昧なものばかり好きになります。でもそういうものは知らないうちに消えてしまうので、いつも不安になります。あると思っていたものが本当はないんじゃないかと怖くなります。不安なのとか怖いのはあまり好きではありません。

私が記憶とか感覚とか、自分でもよくわからないようなことを考えるのは、不思議すぎて考えずにはいられないからです。昔あったことで覚えてることと覚えてないことがあるのはなぜなのか、覚えてない記憶はどこに行ってしまったのか、人によって記憶が違うのはきっと感じ方が違うからだ、だったらなんで感じ方が違うのか、記憶や感覚にはどういう形があるのか。考えないと、私の今の記憶も感覚も、すぐに忘れてしまうから、その不安から考えずにはいられないのです。

その一方で、そういうものばかりを好むせいで考えることが手ざわりの薄いものばかりになってしまうのはやはり怖いのです。私の頭のなかには消えるものしかないということが怖いのです。

私が考えごとをしているとき、他の人たちは動いていて、私がたまに水のなかから顔を出すように周りを見渡すと、彼らはずいぶんと変わっています。私が子どもみたいなままで内面を深くまで掘り進めることに精を出していたら、周りは大人になって、内面にも大人らしいものを取り込んで、外身も中身も全く違っていくんじゃないかと思うと少し怖いです。考えすぎかもしれないですけど。

だから今は手ざわりのあるものを大事にしたいと思っています。手ざわりの薄いものに少し手ざわりを足してみたいと思っています。主に人間関係のことです。今会える人たちとなるべく会いたいし、会ったことのないいろいろな人に会ってみたい。

私の思うことを話してみたい。その人の思うことも聞いてみたい。私とその人との間に、確かなものとして対話があってほしい。誰かのなかに私のことを残したいし、私のなかにいろんな人たちのことを残したいです。

いつでもどこでも、会いたいときに誰かに会えたらいいなと思います。考えごとをして、それを誰かにあったときに話したいなと思います。とても都合のいい考えですが、実現する方法はあるのではないかと思っています。